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14カ国 85名の世界の識者が語る 東京裁判史観批判に耳を傾けよ

植草学園短期大学学長・法学博士
佐藤 和男

●再び脚光を浴びる『世界がさばく東京裁判

平成8年に出版された本書(初版はジュピター出版より刊行)は、東京裁判ならびに東京裁判史観を批判する14カ国85名の識者の見解・主張を集大成したものだが、これまでの10年間に数こそ限られてはいるものの、まことに熱烈な愛読者を国内各地に見いだすことができて、監修に任じた筆者は大きな喜びを感じていた。ところが、最近になって本書に対する世間の関心と需要が急速に増大したと出版元から知らされ、いささか驚いている。
小泉首相の靖國神社参拝をめぐる問題との関連で、東京裁判やいわゆるA級戦犯に関する論議が白熱化し、著名な言論人がマスメディアで本書を引用したり、推薦して下さったことが原因のようだ。
シナ大陸や朝鮮半島の政権が、わが国とは相互に内政不干渉の約束をしているのに、戦歿者慰霊というわが国の固有の国内問題について無作法な妄言を繰り返していることに、日本国民は、マッカーサー憲法といわれる現行憲法の前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という文言の空々しさを、ますます痛感するに至っている。
それはさておき、筆者としては、いかなる事情であるにせよ、前記の書物への社会の需要が増加して、東京裁判なるものの真実の姿が日本国民の間で一層正確に理解されることは、本当に喜ばしいと思われ、かつて靖國神社社報「やすくに」(平成8年12月1日号)に「『世界がさばく東京裁判』が訴える」と題して、この書物の内容を紹介したことをも想起しつつ、本稿では主として今後本書を読まれる方々のためのご参考に供すべく一、二のことを述べておきたい。

●国際法学徒の使命
東京裁判が開廷されたのは昭和21年5月のことだが、その少し前に、わが国における戦時国際法学の泰斗とされた信夫淳平博士(帝国学士院恩賜賞受賞者)は、この裁判を念頭に置いて、大要次のような論稿を残されている。

「大東亜戦争中、旧敵国側には国際法違反の行動が随分あったようだ。一般市民に対する無差別爆撃、市町村の病院、学校、その他文化的保護建物の破壊、病院船への砲爆撃など多々あった。これらの残虐行為を含むいわゆる戦争犯罪に問われるべき被告に対する軍事裁判による処断は、もっぱら戦勝国が戦敗国の彼らに対して行うのみで、戦勝国のそれは不問に付せられるという現行の偏倚な制例の下では、公式の裁判記録の上には日本の戦争犯罪人のみがその名を留めることになるが、国際法学者は別に双方の戦争犯罪を公平に取り扱って、これを国際法史の上に伝え残す学問的天職があるのであり、わが国は惨敗を喫して完全無比の無武装国となったが、国際法の学徒にはなおなすべき任務が十二分にあるのである」

この論稿は、日本の国際法学会の機関誌に掲載される予定であったが、占領軍総司令部の検閲によって削除され、公表されずに終わった(※)。問題は、すでに半世紀を越える“戦後”の期間に、信夫博士のいわれる「学問的天職」がわが国で完遂されたか否かということである。

(※明成社注/この検閲による削除については、当社刊 勝岡寛次著『抹殺された大東亜戦争―米軍占領かの検閲が歪めたもの』にも紹介されています。)