明治の御代 御製とお言葉から見えてくるもの
明治天皇から
現代の私たちへと託された
“百年ごしのメッセージ”
明治の御代の主人公は明治天皇であるにも拘わらず、
教科書をはじめ歴史書の多くでは、あまり触れていないのが実状です。
詔勅は天皇の公的な意思表示であり、
歌は詠み手の心を折々に表現したもので、
明治天皇がその時々に何をお考えになっていたかを知りたいと思えば、
御製をひもとくのが一番確実です。
明治天皇百年祭 記念出版
明治の御代
御製とお言葉から見えてくるもの
定価 本体1,800円(税込1,980円)
ISBN 978-4-905410-38-6
判型・頁数 四六判・320頁
発売 2012年7月
勝岡寛次/著
かつおか かんじ
昭和32年、広島県生まれ。
早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院博士課程修了。明星大学戦後教育史研究センター勤務を経て、麗澤大学国際問題研究センター客員教授。
著書に『天皇と国民の絆』『皇統を守る道』『昭和天皇の祈りと大東亜戦争』『「慰安婦」政府資料が証明する〈河野談話の虚構〉』『抹殺された大東亜戦争』『沖縄戦集団自決-虚構の「軍命令」』(明成社)、『韓国・中国「歴史教科書」を徹底批判する』(小学館文庫)、監修本に『日本近現代史の真実』『教科書から見た日露戦争』(展転社)などがある。
精緻な分析
書評
学問的でありながら、敬愛の念感じる一冊
松浦光修(皇學館大学教授)
「神社新報」平成24年9月3日
明治天皇は、国史上、空前の過酷な国際環境のなか、常に国民の先頭にお立ちになり、世界史上に燦然たる光を放つ時代を現出され、明治四十五年(一九一二)七月三十日に崩御された。今年はその百年祭の年にあたる。戦後教育に毒された現代人でさへ、さすがにそのお名前を知らぬ者はゐまいが、意外なことに現代の一般向けの書籍で、時々の明治天皇の大御心を拝察しつつ、その偉大なる御生涯を明らかにしたものは、これまでほとんどなかった。
本書は、明治天皇の残された「詔勅」と「御製」を丹念にたどりつつ、いはば“大帝の大帝たる所以”を明らかにしたもので、その点、劃期的な著作といへる。
著者の勝岡氏は、『抹殺された大東亜戦争』の大著で知られる篤学の人であり、また、日本人らしい「敬神尊皇」の心を併せ持つ人でもある。たとひ神々や皇室を論じたものであっても、今時は、その行間に著者の暗い反日の情念が噴出してゐる悪書が少なくない。しかし、それらに反して、本書の行間には、明治天皇への清らかな敬愛の念が揺曳してゐる。安心して読むことができ、また読んでゐて心地がよい。
むろん、『韓国・中国「歴史教科書」を徹底批判する』の著者で、学問的義気に満ちた勝岡氏のことであるから、明治天皇を貶める邪説には、本書でも厳しい批判を加へてゐる。その邪説とは、たとへば、明治天皇は、「祭祀に熱心であったわけではない」(笠原英彦『明治天皇』中公新書)、「宮中祭祀そのものを『創られた伝統』と見なしていた」(原武史『昭和天皇』岩波新書)などといふ類のものである。これらの邪説が、大手出版社の「新書」といふかたちで、世間に流布してゐるのを、著者は決して看過しない。そして、きはめて冷静、かつ実証的な手法で、それらの邪説を徹底的に粉砕してゐる。
本書を読みすすめていくうちに、フト……気づくと読者は、いつしか明治天皇の聖徳を、心からお慕ひしてゐる自分の心に気づくであらう。まさに百年祭を記念するにふさはしい著作といへる。ともあれ私どもは、やうやく本書によって、学問的でありながら、しかも、きはめてわかりやすいかたちで、明治天皇の聖徳を偲ぶことが可能になった。そのことを、私は著者に対して、素直に感謝したいと思ふ。
明治時代は百年前に完結した歴史ではない
明治天皇に関する画期的著作が刊行
茅島 篤(教育学博士)
「図書新聞」3078号 平成24年9月15日
今年は明治天皇が崩御した明治四十五年から百年目に当たり、このほど明治天皇に関する画期的著作が刊行された。
著者によれば、子どもたちが学んでいる昨今の教科書に限らずで歴史書でも、明治時代における天皇の役割は「不当に軽視ないしは無視」されており、いわば「主人公を欠いた歴史」になってしまっているのだそうだ。明治天皇に関しては、ドナルド・キーン氏の『明治天皇』(新潮文庫)や松本健一氏ほか碩学による書物も出ているが、どこか隔靴掻痒の感は否めなかった。
明治天皇は生涯に十万首ちかくの御製(和歌)を詠まれたことでも知られている。著者は、御製こそは明治天皇のお心を知る最も確実な史料であると言う。本書で紹介された明治天皇の御製は百五十首以上に上っているが、御製を通じて明治という時代の息吹と精神が、そのまま読み手の心にもダイレクトに伝わってくる。御製やお言葉(詔勅)をふんだんに織り交ぜながら、明治の御代の「主人公」に肉薄した本書は、類書にはない、新鮮な感銘を与えてくれる。
本書は、明治天皇と六大巡幸、大日本帝国憲法と明治天皇、教育勅語と明治天皇、日清・日露戦争と明治天皇、明治の外交と領土問題、明治天皇と明治の祭祀、明治の終焉から構成されている。明治天皇の生涯を追いながら、テーマ別に論じている点もユニークである。主要な祭祀についての謬説には論証している。
明治時代は百年前に完結した歴史では決してない。例えば、「グローバリズム」「地球市民」といった言葉は今日の流行語(クリーシェイ)だが、明治の「文明開化」はその走りとも捉えられよう。だが、そうした普遍的な理念を追求すればするほど、我が国古来の伝統を侮蔑するようになったのも、明治という時代の一面であった。その欠陥をいち早く指摘し、国の向かうべき方向を軌道修正した人物こそが、明治天皇だったという著者の指摘は傾聴に値する。
温故創新。一寸先も見えないような混迷の現代にあって、本書は時代の「羅針盤」たり得る一冊であると思料する。本書を広く江湖に薦める所以である。
私の薦める一冊の本
貝塚茂樹 (武蔵野大学教授)
「教育創造」No.83
平成二十四年七月三十日は明治天皇が崩御されてから百年にあたる。明治神宮では百年祭の儀が厳粛に斎行され、関連の記念行事のいくつかも進行している。
「降る雪や明治は遠くなりにけり」は、昭和のはじめに中村草田男が詠んだ句である。それから時を経て、当時とは比べようもない程に明治は「遠く」なっている。オリンピックの熱狂の陰で、百年祭を取り上げた報道はほとんどなく、ましてや明治天皇の御聖徳に思いを馳せようとする機運は今の日本にはもはや期待できないようだ。
こうした時代の風潮に警鐘を鳴らすかのように編まれたのが本書である。少なくとも私にはそう読めた。もちろん、勝岡氏の筆致はいつものように冷静で実証的である。しかし、「天皇の御存在は無視したままで、明治時代を描く歴史叙述となっています」(3頁)という指摘は、教科書をはじめ戦後の歴史学に対する異議と怒りが込められている。それは、御生涯に約十万首もの御製(和歌)を詠まれた明治天皇の御心に触れることなく明治の歴史を描くことはできないという確信へと連続している。「明治天皇の御製とお言葉(詔勅)を中心軸に据え、そこから何が見えてくるかという視点で、明治の御代を描こうとした」(4-5頁)という本書の意図は、ごく「あたりまえ」のものである。この「あたりまえ」のことさえ無視してきた歴史叙述とは一体何であったのか。筆者と同じく私も暗澹たる気持ちになる。
本書は、六大巡幸に始まり、大日本帝国憲法、教育勅語、日清・日露戦争、明治の外交と領土問題、明治の祭祀を取り上げた六章からなっている。明治の国造りの歴史そのものを生きられた明治天皇の御心が、そのいずれの局面においても重要な意味をもちえたことを本書は余すところなく描写している。
近代国家建設という壮大な使命を背負われた明治天皇が、「欧化」と「伝統」という宿命的な葛藤の中で、いかに御自らの義務を完遂されようとしたか。本書はその答えを数多くの御製を通して現代の私たちに示される。
ときどきに かはりゆくとも いにしえの 聖(ひじり)の御代のおきてわするな(明治四十五年)
本書は、歴史研究の新たな視座を切り開いた画期的な書である。また、御製を通じた明治天皇の御心に触れることで、日本のあるべき姿と今後の指針を掲示してくれる。明治天皇が崩御されて百年の節目にあたり、本書発刊の意義は大きく、本書に出会えたことに心から感謝したい。
明治天皇ゆかりの品々・貴重な御写真を口絵に掲載
明治天皇の六大巡幸をたどる
目次
- まえがき
- 第一章
- 第二章
- 第三章
- 第四章
- 第五章
- 第六章
- 終章
明治天皇と六大巡幸
明治天皇のご誕生前後から青年期(明治十年代)までを、明治維新と六大巡幸を中心に描きます。
ご巡幸がもたらした最大の賜物、明治国家を飛躍的に発展させた原動力とは何だったのでしょうか。
- ご誕生前後
- 孝明天皇の睦仁親王
- 孝明天皇と明治天皇の行幸
- 王政復古の大号令と五箇条の御誓文
- 初めての大阪行幸と東京行幸
- ご学問とご修養
- 宮廷改革と西郷隆盛の薫陶
- 六大巡幸① 西国巡幸(明治五年)
- 六大巡幸② 奥州巡幸(明治九年)
- 西郷隆盛の死と明治天皇
- 六大巡幸③ 北陸・東海巡幸(明治十一年)
- 勤倹の勅語と教学聖旨
- 六大巡幸④ 山梨・三重・京都巡幸(明治十三年)
- 六大巡幸⑤ 北海道・秋田・山形巡幸(明治十四年)
- 六大巡幸⑥ 山陽道巡幸(明治十八年)
- 六大巡幸に共通するもの
- ご巡幸のもたらしたもの
大日本帝国憲法と明治天皇
明治天皇が名実ともに立憲君主として登場された壮年期。
アジアで初めての近代憲法制定に、明治天皇はどのように臨まれたのか。
帝国憲法制定の真実の歴史が明らかに。
- 大日本帝国憲法の淵源としての尊皇思想と公議思想
- 民撰議院設立建白書と漸次立憲政体樹立の詔
- 聖徳涵養と天皇親政運動
- 明治天皇とグラント将軍
- 自由民権運動の日本的特質
- 明治十四年の政変と「国会開設の勅諭」
- 岩倉の「憲法綱領」と伊藤博文の欧州憲法調査
- 華族制度及び内閣制度の創設
- 伊藤・井上の欧化政策とその破綻
- 井上毅の日本主義的転回と憲法草案の起草
- 枢密院での憲法審議と明治天皇
- 欽定憲法の「欽定」ということ
- 大日本帝国憲法は、外国の憲法の模倣ではない
- 大日本帝国憲法の発布
教育勅語と明治天皇
天皇ご自身のお考えが色濃く反映され、精神面・教育面で明治国家の支柱となった教育勅語。
そこには時代と場所を超えた普遍的な意義が…。
- 明治天皇が受けられた教育
- 明治初年の教育と欧化主義の影響
- 明治天皇と教学大旨
- 『幼学綱要』の編纂
- 小学校教則綱領と小学校教員心得
- 明治二十年前後の教育の混乱
- 勅語起草のきっかけとなった地方長官会議
- 教育に関する「箴言」の編纂開始
- 法制局長官井上毅の起草
- 起草に際しての元田永孚との協力
- 教育勅語の内容(首文)
- 教育勅語の内容(本文)
- 教育勅語の内容(末文)
- 明治天皇と教育勅語
- 教育勅語の御下賜とその影響
- 教育勅語の世界的評価
- 教育勅語渙発の歴史的意義
日清・日露戦争と明治天皇
明治という時代にとって、大きな意味を持つ日清・日露戦争。
日本は何故、清国、次いでロシアと戦火を交えなければならなかったのか、明治天皇ご自身のお立場から考察。
- 国軍の基礎を築いた西郷隆盛と明治天皇
- 西南戦争と竹橋事件
- 軍人勅諭と明治天皇
- 陸海軍大演習と明治天皇
- 海軍の発展と明治天皇
- 日清戦争と戦局の推移
- 広島大本営の明治天皇
- 日清戦争の歴史的意義
- 三国干渉から日露戦争へ
- 日露開戦と明治天皇の御苦悩
- 彼我の戦力差と旅順港閉塞作戦
- 困難を極めた旅順攻囲戦と乃木希典
- 奉天会戦と大山巌
- 日本海海戦と東郷平八郎
- 明治天皇と日露戦争
- ポーツマス講和会議と凱旋式
- 日露戦争の世界史的意義
明治の外交と領土問題
竹島や尖閣といった今日の領土問題も、幕末から明治にかけて日本が画定した、我が国固有の領土であるという事実が源。
正確に知っておくべき明治の領土画定と外交の歴史。
- 幕末の領土問題
- 安政の不平等条約
- 明治新政府の外交方針
- 岩倉使節団と条約改正予備交渉の蹉跌
- 寺島宗則と条約改正交渉の失敗
- 沖縄県の設置(琉球処分)
- 対朝鮮外交と日朝修好条規
- 樺太千島交換条約と「蛍の光」
- 井上馨と鹿鳴館外交の破綻
- 大隈重信の条約改正交渉と、その挫折
- 大津事件と明治天皇
- 陸奥宗光と領事裁判権の撤廃
- 尖閣諸島と台湾の領土編入
- 明治中期の対朝鮮外交
- 日英同盟の締結
- 竹島の領土編入
- 樺太の国境画定
- 韓国の保護国化
- 韓国併合と明治天皇
- 小村寿太郎と関税自主権の回復
明治天皇と明治の祭祀
明治期における主要な祭祀と明治天皇の出御の有無を徹底的に調査。
明治天皇がいかに祭祀に熱心であったかを立証します。
- 孝明天皇から明治天皇に継承された敬神の心
- 宮中祭祀の再興と歴代天皇陵の荒廃
- 近代皇室祭祀の原点・神武天皇祭の成立
- 孝明天皇後月輪山陵の造営と先帝祭の成立宮中三殿の成立
- 新嘗祭と大嘗祭
- 明治天皇と祭祀の復興
- 明治天皇と祭祀の新設
- 明治天皇と伊勢神宮①──毎朝御代拝
- 明治天皇と伊勢神宮②──四方拝及び「政始」
- 明治天皇と伊勢神宮③──例幣使・公卿勅使と賢所神嘗祭の創始
- 明治天皇と伊勢神宮④──遷宮勅使
- 明治天皇と伊勢神宮⑤──歴史上初めての神宮ご親拝
- 明治天皇と熱田神宮
- 明治天皇と橿原神宮
- 明治天皇と吉野神宮
- 明治天皇と湊川神社
- 明治天皇と靖国神社
- 明治天皇は祭祀に不熱心だったのか?
- 明治天皇の祭祀への出御の実際
明治の終焉
明治天皇崩御の日の様子と明治天皇の世界的評価を伝えるとともに、
明治天皇とその御代に、我々は何を学ぶべきか、明治という時代の今日的意義について考えます。
- 明治天皇の崩御
- 明治天皇と乃木希典
- 明治天皇の世界的評価
- 明治の御代と現代
- あとがき
- 明治天皇略年表