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特攻の魁 関大尉に魅せられて

戦後のタブーを打ち破りたい

―中城さんは趣意書に「これまでの数十年の自分の演劇活動はすべて無かったことにしてもいい」から映画化を実現したいと書いておられました。そこまでこの作品に賭けられる思いとは?

中城 これまでも特攻を扱った映画やテレビはありました。しかしその多くが特攻隊員の国を思う自己犠牲の精神を正面からテーマに捉えることを避けているのです。例えば、半島出身の特攻隊員に「おれは日本のために死ぬのではない。韓民族のために死ぬのだ」と言わせたりしている。そういう事実の有無は別として、これでは特攻全体にまで誤解を抱かせてしまう。

―中城さんの考える主題とは?

中城 当時のありのままの姿を知ってほしい。彼らは軍国主義の犠牲になったというような一方的な偏った見方があまりにも多すぎる。第一、国を思う気持ちがなければ航空隊に志願などしませんよ。先ほども申しましたけれども、私ら子供だって、一日も早くお国のために役に立つんだと純粋に思っていました。国のために一命を投げ出しても惜しくないという特攻隊員の当時の心情が、まるで作られたものだったというような戦後の見方はおかしい。

―戦後の誤った歴史観がまだまだ根強いですね。

中城 関大尉のお母さん、サカヱさんも戦後はつらい人生を送られました。西条市の地元の作家が、サカヱさんを主人公にして小説を出しています。「母の碑(いしぶみ)」という題名ですが、なかなかいい作品です。サカヱさんは、戦時中は軍神の母と崇められていたのが、戦後は手の平を返したように、“軍国主義”批判の矢面に立たされた。「関は生き延びて山中に隠れている」というような心ない風評まで立てられて…。草餅の行商をして細々と生きたサカヱさんは、昭和二十八年「せめて行男の墓を…」との遺言を残し、その生涯を閉じ、ここに関家は断絶したのです。戦後の世相は、“軍神”の墓を建てることさえも許さなかったのです。

―その一事をとっても戦後という時代の酷薄さ、非情さが分かります。中城さんは、そういう戦後の風潮に同調されなかった。

中城 周知のとおり、戦後の日本では、アメリカの占領政策と大陸からきた左翼思想がミックスして異常な時代状況が作りだされてしまったわけですが、ある意味でその影響が最も大きかったのは演劇界かもしれません。そんな中で、私がその風潮に染まらなかったのは、一つには、学生時代に大学の寮―当時はどこもそうでしたが、東大の駒場寮も左翼の巣窟でした―で、左翼の学生のいやらしさをいやというほど見てしまったためですね。醜い権力闘争があったり、よその大学の学生を見下したり…。それでいて卒業と同時に資本家に転身した器用な人もいた。責任ある男の言動じゃないですよ。

もう一つは、先輩に恵まれた。私が文学座に入ったときは、三島由紀夫さんと福田恒存さんが文藝演出部の花形で、あこがれでした。ですからね私は福田さん脚本のシェイクスピアや三島作品をよく取り上げました。

今、関大尉のシナリオの映画化と共に、新国民劇運動を起こそうとしているんです。戦前に澤田正二郎が起こした日本回帰の演劇運動『新国劇』の原点を継承したいと志しています。関大尉のほかには吉田松陰や会津白虎隊などを取り上げたいと思っています。

一人舞台公演の旅へ

中城 今、演劇界にも新しい波がきているんです。小さい劇場ですが、数箇所で若い人たちが特攻隊の話を取り上げています。今の若い人たちは先入観がまるでなくて、まずびっくりするんですね、特攻隊の純粋な生き方に。その驚きを直に舞台にぶつけている。研究不足で、よその国の兵隊のような日本の軍人が出てきたりしますが、それはこの際目をつぶって、まずは彼らの感性を大事にしたいですね。もちろんもっと大きな舞台で大勢の観客にみて頂くときには、しっかりした時代考証が必要ですが。なかには女性だけで、これは海のほうだけれども、回天特攻隊を真正面から取り上げようとする動きも少しずつ出てきている。風向きが多少は変わりつつあるのかなという感じはします。

―靖国神社の例大祭では、一人語り公演を奉納されますね。

中城 子供の頃から靖国神社のお祭りが大好きで、母に連れられて毎年来ていました。当時は、参道に戦争のパノラマが飾られて子供心に迫力を感じました。そういう親近感もあったものですから、いまどき、靖国神社のことを悪くいう人の気持ちがわからない。国のために死んだ方々を国のしきたりでお祀りする。それは世界中、どこでも同じですよ。しかも日本の宗教は一神教的な排他性がありません。外国が何か文句いってきたら、日本人の宗教、心の問題だといって突っぱねればいいんです。

―舞台でも、突入時に「靖国で会おう」と関大尉に言わせていますね。

中城 あれが偽りのない彼らの気持ちだったと思うんですね。英霊はその約束通り、靖国の御社におられる。その御前での舞台ですから、心を込めて奉納したいと思います。

中城まさお(なかじょう・まさお)
昭和6年東京生まれ。東大法学部卒。文学座で三島由紀夫、福田恒存、松浦竹夫ほか各氏の影響を受ける。東宝現代劇を経て、『詩と演劇の会』設立。自作一人芝居の全国縦断公演が話題に。巡回公演に力を入れ自作品ほかで七千ステージを超える舞台。『猿楽町空間』主催。NHK朗読の時間他出演多数。朗読音読講師。日本劇作家協会会員。「靖國で会おう」ほかを一人語り、叙事劇として上演するかたわら、映画化、大舞台化を模索中。『新しい国民劇運動を進める会』暫定代表。
公演についてのお問い合わせは、
新しい国民劇運動を進める会まで。

※「日本の息吹」平成15年11月号より抄録、許諾転載

靖國で会おう―劇/神風特別攻撃隊 敷島隊隊長 関行男 二十三年の生涯