日本の歴史・伝統文化など「日本人の誇り」をよみがえらせる書籍の出版をしています

祭祀国家の伝統 ― 君民共祭・君民共祈

新田 均

 

 大嘗祭   (平成2年 御製)
父君のにひなめまつりしのびつつ我がおほにへのまつり行なふ

 新嘗祭近く (平成27年 御製)
この年もあがたあがたの田の実りもたらさるるをうれしく受くる

日本とはどんな国ですかと問われたら、私は「祭祀国家」「君民共祭・君民共祈」の伝統を持つ国だと答えます。「君民共祭(くんみんきょうさい)」「君民共祈(くんみんきょうき)」は、私の造語ですが、天皇と国民がともに祭りを行う国家、天皇と国民が互いに幸福と繁栄を祈り合う国という意味です。

この国家伝統は神話の時代に遡ります。「天孫降臨」の時、高天原(たかまのはら)から降って行かれる孫のニニギノミコトに、天照大神は鏡を授けて「これを私だと思って祭りなさい」、稲を授けて「これで国民を養いなさい」と言われています。天皇祭祀の伝統はここに発しています。ここから、八咫鏡(やたのかがみ)を祀り、新しい稲の稔りを天照大神に奉告し、感謝する伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)や、宮中での新嘗祭(にいなめさい)の伝統がはじまり、今日まで続いています。

この神話には、日本国とは、天上の高天原の秩序を、地上に移して、現実化したものでなければならないという意味も込められています。天照大神が神々を治めておられるように、天照大神の子孫である天皇は、神々の子孫である国民を治めなければならない。逆に、神々が天照大神に仕えているように、神々の子孫である国民は、天照大神の子孫である天皇に仕えていくべきだという理想です。

祭祀国家としての日本の伝統は、君主が国民のために祈っているというだけではありません。国民も君主のために祈り続けてきました。その始まりは、天照大神の岩戸隠れの時に遡ります。天照大神が弟のスサノオノミコトの大暴れによって天石窟(あまのいわや)に引きこもられてしまった時、臣下の神々は石窟の前に榊を立て、八咫鏡と八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)を掛け、お祭りをして、天照大神の御出現を祈りました。ここに神道祭祀の原型があります。

そして、この祭祀に参加した天児屋命(あめのこやねのみこと)や太玉命(ふとだまのみこと)等がニニギノミコトに従って天降る時に、「天皇のために祈りなさい」「傍にいて天皇を守りなさい」と天照大神から命じられました。

皇位の継承古代の朝廷では、その年の稲の豊かな祈りを願って各地の神社で行われる祭りの前に、主要な神社に対して、天皇から幣帛(神に奉げる織物など)が授けられました。そして、これを受けとった神社では、五穀豊穣とともに天皇や朝廷の安泰が祈られたのです。この祈りは朝廷が衰えて祈年祭(農作業の開始を祝い豊作を祈る祭り)の班幣(神祇官が幣帛を配布すること)が行えなくなってからも、各地の神社において、中世、近世を通じて続けられ、今日でも全国八万余の神社で行われています。

このように日本では、「祭り主としての天皇」の神話と伝統が表だとすれば、その裏に、国民の祈りの神話と伝統が存在しているのです。

この祭祀国家の伝統こそ、平成31年に訪れる御代替わりに際して、私たちが思い起こし、守り、伝えていかなければならない日本の本質だとの思いを胸に、このブックレットを書きました。

皇位の継承―今上陛下のご譲位と御代替わりの意義