本書の特色・特徴
著者 田中 孜
この作品は、日本とヴェトナムを結ぶ、今から100年以上も前の、隠された歴史を、6年もかけて解明しようとまとめた本です。隠された歴史というのは、ヴェトナムの愛国者潘佩珠と潘佩珠を援助しようとした義人・浅羽佐喜太郎の生きた表だけでなく、裏も含む両面史のことです。
すべてが秘密のヴェールに包まれ、ごく最近まで世に知られることがありませんでした。浅羽佐喜太郎は、郷土が産んだ杉原大使です!
これを少しでも解明しようと出来上がったのが、この本です。申すまでもなく、圧倒的な資料の不足の末の作品でもありますし、所詮は力不足の私でありますから、不満足の事項も数多くあると思います。今後の奮起剤としても、お読みいただいたご感想等のご教授をいただければ本当に幸いです。
この本には、以下のような特色・特徴があります。
- 従前は、日本国内からの研究が大多数でしたが、この本は筆者の在越時代からの、いわば「外からの視点」にたっての論述です。
- 潘佩珠や浅羽佐喜太郎研究には、今まで、部分的内容が多かったし、その説明も字句程度に限定され、主張とか論説的表現にも不十分な点が多かったと思われます。 この本には、浅羽佐喜太郎家に伝わる「緘口令」の話と、これに関連する話にも十分触れながら、筆者の主張や推論も加味し、新たな疑問や解明にも取り組んでいます。
- この本は、日越という二つの国のおかれている時点からの、全容解明に努力をいたしました。従ってこの本の主題となる前後の歴史にも言及しながら、歴史の流れの中の位置づけを考えています。
- ドンズーと言う言葉は「東遊」ではなく、潘佩珠の意図からの視点で、筆者は「日本に学べ」としています。維新後の日本は健壮で気迫に富んでいました。漲る気迫が溢れる反面、一方では大胆さと寛容さがありました。それこそが、日本を手本とするアジア諸国の期待と願望の国でした。日本は、まさに偉大な国です。
- 浅羽佐喜太郎の名は、潘佩珠と名と同様にヴェトナムでは広く知られていますが、日本では殆ど知られていません。郷土の偉人の隠れた全行や篤行を知り、郷土と日本に生きる人間の誇りと自信を抱くことこそ、あるべき「日本の心」であり、この「日本の心」こそ、「ドンズー」の心でありたいと、筆者は願っています。